「基礎がしっかりしてこそ、新しいことに取り組める」――西村なおひこ候補(三股町長選2026)

三股町長選挙への立候補を決めた西村氏。
長年にわたり役場職員として町政に携わり、副町長を8年間務めた後、町議会議員として4年間活動するなど、約40年にわたって行政に関わってきた。
今回の立候補を決めた背景には、これまで培ってきた経験を今こそ生かしたいという思いがあったという。もう一つの理由として挙げたのが、隣接する都城市との「差」だった。
40年の行政経験を、今こそ生かす
西村氏が町長選への立候補を決意したきっかけは、現職町長の引退表明だった。
「今まで長年役場職員として働いてきて、8年間は副町長として働き、ここ4年間は議会議員として働いた。40年間行政に関わってきました。やっぱり今こそこの経験を生かすべきかなという思いがあって、自分でやってみようということがきっかけです」
長年、行政の内側から町政を見てきた経験は、西村氏自身が今回の選挙で打ち出す大きな強みでもある。
一方で、立候補を決めたもう一つの背景には、隣接する都城市の存在があった。
都城市はふるさと納税で全国有数の実績を持ち、その財源を活用して子育てや移住・定住など、さまざまな政策を展開している。
三股町と都城市は同じ生活圏にあり、中学校卒業後に都城市へ通学する住民も多い。だからこそ、同じ経済圏にありながら、自治体によって受けられる行政サービスに差が広がっていくことに、町民からも声が上がっていたという。
「同じ経済圏なのに、都城市が子育ての費用を無料にするとか、移住定住の費用をすぐ出すとか、突出していい政策を打っている。『同じ経済圏なのに、道路一本を隔てて、こんなに違うんだろう』という声が町民から聞こえてきていました。その辺も、とにかく埋めたいなという思いがあります」
もっとも、都城市と同じ規模の財源を持つことは現実的ではない。西村氏もその点は理解した上で、「少しでも近づければ」という考えを示す。
「確実にできること」を公約に
今回の選挙で西村氏が掲げた公約の中でも、特に重視しているのが、保育料の完全無償化、高齢者への補聴器・住宅改修・福祉用具給付の拡大、町営合同墓の整備・利用料の設定だ。
これらの政策に共通しているのは、「4年間の任期の中で、確実に実現できるもの」を選んだという点にある。
選挙に向けて町民と話をする中では、少子化対策を求める声も多く聞いたという。
しかし、少子化対策は国全体が長年取り組んできたにもかかわらず、簡単には改善していない。給食費や高校授業料、医療費などの無償化が進む一方で、「それだけで少子化が解決するわけではない」という難しさも感じている。
だからこそ西村氏は、少子化対策を進めながら、同時に「今すぐ解決できる住民の困りごと」にも目を向ける。
特に高齢者から多く聞いたのが、お墓に関する問題だった。
「子育て施策と違って、これはすぐにできる。お墓の土地もちゃんとありますし、お墓を作るだけですから。4年間のうちに確実にできるものは何かなと思ったときに出てきたのがこれなんですね」
一方、ふるさと納税の強化など、財源確保については重要性を認めながらも、具体的な金額を安易に約束することには慎重だ。
「私がなったらすぐ次の年は5億円します、5億を押します、というのは全然言えないし、不確実やなという思いがあります。でも、しないと、取り掛からないといけない」
できることは確実に実現する。そして、時間をかけて取り組むべき課題には、行政の中に入ってから制度設計を進める。
西村氏が今回の公約に込めたのは、そうした現実的な姿勢だ。
「継続」に「プラス」を
西村氏が描く三股町の将来像の中心にあるのは、「人口減少」と「地域活性化」だ。
そのための二つの方向性として掲げるのが、「健康で安心して暮らせるまちづくり」と「若者や子育て世代に選ばれるまちづくり」である。
高齢者に対しては、現在行われている福祉や介護、高齢者サロンなどの取り組みを継続する。一方で、若者や子育て世代に対しては、移住・定住、学校教育、子育て支援などを進めていく。
ここで特徴的なのが、現在の町政を大きく否定するのではなく、「継続」を基本に据えている点だ。
「今やっている事業をなくすというのがどうなのかなと思っています。当然、不要なものは精査しないといけない。でも、今やっている事業は絶対継続していって、プラスしないといけない」
西村氏の政策集では、「推進」「拡大」「検討」などの言葉も使い分けているという。
「推進」は現在行っている政策をさらに進めること。「拡大」は既存の制度をより広げること。「検討」は新たに取り組みたい政策を指す。
例えば現在、中学校まで行っている医療費助成を高校生まで拡充することも、将来的な課題として「検討」に位置づけている。
「どれも、やめてしまうと、止まってしまうと、また困るところも出てきますから。変えるものは継続が大事だと思っています。継続にプラス何かがないといけない」
既存の町政を土台として守りながら、その上に新しい政策を積み重ねていく。それが西村氏の考える町政の方向性だ。
「三股町だけ」で考えない広域連携
三股町の将来を考える上で、西村氏が重視するのが周辺自治体との連携だ。
都城市、曽於市、志布志市、三股町による広域的な取り組みも存在し、観光や道路整備など、自治体単独では完結しない課題については、広域で考える必要があるという。
特に道路や観光は、自治体の境界を越えて考えなければならない。
「お客さんが宮崎だけに来るわけでも、鹿児島だけに来るわけでもない。どこに行っても魅力があるように、連携して、例えば広報も一緒にやりましょう。道路は当然一緒ですから、道路の整備もお互いにやりましょうというのが連携だと思います」
一方、子育て支援や高齢者支援など、自治体がそれぞれ住民に提供するサービスについては、自治体ごとに差があることも当然だとする。
だからこそ、自治体単位で競う部分と、地域全体で連携する部分を分けて考える必要がある。
投票率を上げるには、「政治を身近にする」
取材では、投票率の低下や主権者教育についても話を聞いた。
西村氏は、学校で選挙の仕組みや投票の重要性を教えること自体は、すでに行われていると指摘する。
それでも投票に行かない人がいるのは、「政治が自分の生活と結びついていると実感できていないからではないか」と考える。
「投票に行っても行かなくても、生活は変わらないよ、みたいなところが実際はあるんですよね」
だからこそ、自分たちの生活に直接関わる政策を示し、「この人が当選したら、自分たちの生活がこう変わる」と実感できる候補者の存在が重要になる。
今回の三股町長選では、3人の候補者による公開討論会が開かれ、多くの住民が会場に集まった。
また、若い候補者が立候補したことについても、「今回の選挙を盛り上げた」と評価する。
「荒武君が挑戦したことって、すごく良かったと思うんです。SNSで発信しますし、今まで政治とか選挙に興味がなかった人たちが見たりしますから」
若い世代が政治に挑戦することで、同世代の人々が政治を身近に感じるきっかけになる。西村氏は、そうした「きっかけ」の積み重ねが投票行動にもつながると考えている。
さらに、議員の年齢構成についても、若者が政治に入りやすくする仕組みがあってもいいのではないかという考えを示した。
女性の議員比率を高める仕組みが世界各地にあることに触れながら、「若い人」にも政治参加のきっかけをつくる必要性を語る。
「基礎がしっかりしてこそ、新しいことに取り組める」
今回の選挙で、西村氏が他の候補者との差別化として挙げるのは、「経験」だ。
若さを前面に出す候補者がいる一方、西村氏には約40年にわたる行政経験がある。
役場職員として町政に携わり、副町長、町議会議員も経験した。また、消防団や商工会、公民館など、地域のさまざまな活動にも関わってきた。
「三股町の皆さんと40年間付き合っていますから。いろんなことで、そういう経験が他の候補者と違うところかなと思っています」
その経験を踏まえて、西村氏が今回の選挙で強調するのが、「行政の基礎をしっかりする」という考えだ。
「基礎がしっかりしていないと応用がきかない。基礎がしっかりしてこそ、新しいことに取り組める」
これまでの事業を引き継ぐだけではなく、新しい政策にも挑戦する。そのためには、まず行政の基礎を安定させることが必要だという。
「前の事業を引き継ぐだけじゃなくて、新しいことを取り組むために、基礎がしっかりして、今までも守っていくというのが強みかなと思っています」
40年間、行政の内側から町を見てきた経験。それを「守り」に終わらせるのではなく、新しい政策を実現するための土台として生かすことが、西村氏の目指す町政である。
若者へ――「まず、政治に興味を持ってほしい」
最後に、学生や若者へのメッセージを尋ねた。
西村氏が例として挙げたのは、今回の町長選に立候補した荒武氏だった。
学生の頃から政治に関心を持ち、議員のインターンや国会議員秘書を経験し、自ら選挙に挑戦する。その姿勢を「すごい」と評価する。
「ぜひ学生の頃から政治に興味を持って、いろんな経験をしてもらいたいと思います」
ただし、政治参加は必ずしも立候補することだけではない。
自分の仕事を持ちながら選挙や政策について学び、自分なりの考えを持つことも政治参加の一つだという。
「議員に立候補することだけが政治に参加じゃない。政治に興味を持って、自分の仕事を持ちながらでも、選挙に対して、政策に対して知見を持つというのを勉強することが大事だと思うんですよね」
そして、そのためには「いろんな人の話を聞く」ことが重要だと話す。
政治にはさまざまな考え方があり、どれが正しいかを最終的に判断するのは一人ひとりの有権者だ。
「いろんな人の話を聞いて、自分はここの考えに合うよね、というのを見つけてもらうといいかなと思います」
政治に興味を持つ。さまざまな人の話を聞く。そして、自分自身で考える。
西村氏が若者に伝えたのは、そんな政治との関わり方だった。
三股町の人口減少や地域活性化という大きな課題に対して、すぐに答えが出るわけではない。それでも、今できることを一つずつ実現し、これまで積み重ねてきたものを守りながら、新しい政策を加えていく。
40年にわたる行政経験を持つ西村氏が描くのは、急激な変化ではなく、「継続」と「挑戦」を両立させる町政の姿だった。


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