「人口減少という前提からの脱却へ、挑戦」――荒武みるき候補(三股町長選2026)
更新日:8月30日

「人口減少に対する対策をしっかり取り組まなければ、20年先、30年先の三股町を守りきれないのではないか」
三股町長選への立候補を決意した理由について、そう語る荒武氏。
これまで増加傾向にあった三股町も、人口減少局面に入りつつある。荒武氏が今回の選挙で掲げるのは、単に人口減少の「影響に対応する」のではなく、可能な限り人口そのものを維持するという目標だ。
今回は、三股出身の荒武氏に、立候補の理由と、目指す三股町の姿について話を聞いた。
「2割しか減らない」ではなく、「2割減を食い止める」
荒武氏が町長選への立候補を決意した最大の理由は、三股町の人口減少に対する危機感だった。
「きっかけは端的に言うと、三股町の人口減少に対する対策です。そういう対策をしっかり取り組まなければ、20年先、30年先の三股町という自治体を守りきれないのではないかという大変な危機感を抱いたからです」
荒武氏は2050年を一つのターゲットとして捉えている。
2025年と2050年を比較すると、三股町の人口は約2,000人減少し、現在の約8割になると見込まれている。しかし、荒武氏は「全国的に人口が減少するのだから仕方がない」「2割程度の減少なら大きな問題ではない」とする考え方に異を唱える。
「2割でとどまるのであれば、もっと減少幅を少なくすることができるんじゃないか。そこに挑戦することができるんじゃないか」
人口を維持できれば、それだけ地域の経済規模も維持できる。
一方で、人口が2割減少すれば、地域の社会経済活動も縮小し、地域を支える担い手も減っていく。
さらに問題なのは、総人口だけではない。
2025年時点で53~54%程度とされる生産年齢人口が、2050年には47.6%まで低下すると見込まれている。
「社会の中心的な担い手である人たちが、総人口の半分以下になってしまう。そうなったときに、税収はどうするのか、財政は持続可能であるのか。そこに対する大変な危機感を持っています」
だからこそ、荒武氏は「人口が減ることを前提にする」のではなく、「人口を維持する政策」を掲げる。
「担い手をしっかり確保して、みんなに同じような行政サービスが提供されたり、地域の見守り機能が機能したりすることを、行政として責任を持って町民の方に示していかないといけない」
三股町にこだわる理由は「唯一無二のふるさと」
人口減少は三股町だけの問題ではない。それでもなぜ三股町に焦点を当てるのか。
その問いに対して、荒武氏は明確に答える。
「それはふるさとだからです。僕の唯一無二のふるさとだからです」
荒武氏は三股町出身で、三股町で育った。
「本当に僕にとっては大好きだし、どの時代においても、この三股町というのを残したい」
だからこそ、三股町に住む人々をどう幸せにするかを考え、そのために人口維持政策を取る必要があると考えている。
「このふるさと三股に対して、本当に責任のある態度だというふうに思っています」
政策の「一丁目一番地」は、政策を実現するための財源
荒武氏は20~30項目ほどの政策を政策提案書に掲げている。
その一つ一つを実現するためには、当然ながら財源が必要になる。
例えば、保育料の無償化には約2,000万円程度が必要になる一方、医療費の無償化には5,000万~6,000万円程度かかるという。掲げる政策をすべて実現しようとすれば、4年間で20億円程度、少なく見積もっても10億円程度の財源が必要になると荒武氏は試算する。
そこで政策の「一丁目一番地」として掲げるのが、ふるさと納税の拡大だ。
現在約2.4億円のふるさと納税を、10億円まで引き上げることを目標としている。
「政策を実現するための投資の源を作る。その源が、私はふるさと納税10億円というふうに掲げているところなんですよね」
ふるさと納税による寄附額が増えれば、町の実質的な財源も増える。
例えば、10億円を達成すれば、現在との差額から町に残る財源は年間約4億円増えると想定。4年間で16億円、5年間で20億円の原資を生み出せるという考えだ。その財源を、子どもの医療費無償化や高齢者向け住宅、農業への設備投資補助など、さまざまな政策に振り向ける。
「20億円というのは自由に使えるお金なので、様々な政策の自由度が高まる」
政策を実現するための財源を先につくり、その財源を人口維持政策に投資する。
荒武氏の政策は、この循環を中心に組み立てられている。
人口維持の三本柱は「子育て・住宅・仕事」
では、人口を維持するためには何が必要なのか。
荒武氏は三つの要素を挙げる。
「子育て教育の環境の充実と、二つ目が住宅の供給、そして最後三つ目が仕事を提供すること。この三つを揃えていくことが、働き世代が帰ってきて、子どもたちを産み育てることにつながっていく」
人口維持を「働き世代が三股町に戻り、子どもを産み育てること」と定義し、そのために必要な環境を整えるという考え方だ。
そのモデルとして、人口増加に成功している自治体の事例にも注目する。
子育て・教育、住宅、雇用。この三つを組み合わせることが共通した成功パターンだとし、三股町でも実践したいとする。
〇子育て・教育環境の充実
一つ目は子育て・教育環境の充実だ。具体的には、18歳までの子ども医療費無償化、妊産婦の健診無償化、保育料無償化などを掲げる。
さらに教育については、三股中学校の規模に課題を感じているという。
町内唯一の中学校である三股中学校は、全校生徒が約1,000人、1学年約300人規模。
小学校では少人数教育ができていても、中学校に進学すると生徒数が大きくなるため、一人一人に合った教育が十分にできているのかという課題がある。
全国学力・学習状況調査でも、国語・数学について全国平均を下回る状況があるとして、教育環境の改善を訴える。
その具体策が「中学校の教員10名増員」だ。
「一人一人に目を配って、学力を身につけさせたり、学習の意欲を身につけさせなければならない。課題が明確なのです」
ICTなどの導入だけに頼るのではなく、教員を増やすことで一人一人に目を配る教育を実現したいとする。
〇住宅の供給
二つ目は住宅だ。町内にある団地跡地や児童館跡地、分譲地として保有している町有地などを活用し、子育て世帯向けの住宅を整備する構想を持つ。
その一つが、土地を無償で分譲し、そこに住宅を建ててもらう方法。
もう一つは、町が住宅を建設して入居してもらい、家賃という形で土地代・建物代を支払ってもらう方法だ。
25年間住み続ければ、最終的に土地と建物の所有権を譲渡する「もらえる住宅」を整備したいという。移住者や子育て世帯向け住宅の供給で成果を上げている自治体を参考に、三股町でも町有地を活用した住宅政策を進めたい考えだ。
〇雇用の創出
三つ目が仕事だ。企業誘致に加えて、リモートワークの環境整備も掲げる。
24時間利用できるリモートワーク・コワーキングスペースを整備し、東京や大阪などで働いていたIT関係者、企画職、広報関係者など、パソコンを使って仕事ができる人が三股町に移住できる環境をつくる。
さらに、企業誘致にも取り組む。
国道269号線や宮崎自動車道に近接する立地を生かし、工業用地を造成した上で、工業、物流、食品加工などの企業を誘致する構想だ。
企業が立地すれば雇用が生まれ、住民の所得につながるだけでなく、町税や固定資産税の増収も期待できる。
「それをまた、教育とか住宅政策とか、福祉に振り向けることができる」
人口維持のための「子育て・教育」「住宅」「雇用」は、それぞれ独立した政策ではない。
仕事があるから人が来る。住宅があるから住める。
子育て・教育環境があるから、そこで家族を形成できる。
そして人口が維持されれば税収が確保され、それを再び政策に投資できる。
荒武氏が掲げる政策は、このように相互につながっている。
「協働のまちづくり」を、もっと町民の近くへ
三股町が掲げてきた「協働のまちづくり」についても、荒武氏はさらに進化させたいと考えている。現在も、公民館と役場の連絡会議や、役場職員が公民館に出向いて意見交換をする取り組みなどは行われている。
しかし、荒武氏はそこからさらに一歩進めたいという。
「もっと僕は、その協働のまちづくりを町民にぐっと寄せたい」
役職を持つ公民館長などだけではなく、特別な役職を持たない一般の町民からも、日々の生活の中で感じている課題やニーズを聞く。その声を政策づくりに反映させる。
その実践として、荒武氏は昨年から「まちづくり対話集会」を行ってきた。
「政治家がよく『対話』とか『協働』とか掲げがちですけど、それをもっと実践に移して、一般の町民の人たちからいろんなニーズとか課題感とか、町の考え方を伝えて、その反応を見て政策づくりに生かしていく」
単に「対話」を掲げるだけではなく、町民の声を政策形成につなげる。
それが荒武氏の考える「真の協働のまちづくり」だ。
「文教のまち三股」を名ばかりにしない
もう一つ、三股町が掲げている「文教のまちづくり」についても、理念そのものを変えるのではなく、実践を強化したいと語る。
三股町では、町の成り立ちの段階から教育振興と産業振興を掲げてきた歴史があり、そこから「文教のまち三股」という理念が生まれている。現在も、放課後児童クラブの充実や、子どもたちがさまざまな体験をするチャレンジ教室、地域の伝統芸能への支援などが行われている。
しかし、荒武氏は「それだけで文教のまち三股と言えるのか」と問い直す。
「個別最適な学習ということを文科省も言い始めていますけど、そういったことが言える本当に体制になっていますか」
その上で、教員の増員や新たな学びの場の整備を提案する。
特に、御本町交流拠点を三股町の第二の拠点と位置づけ、「三股町未来創造キャンパス」をつくり、社会企業や研究機関などと子どもたちが学び合える環境を構想している。
「そうすることによって、『文教のまち三股』という理念をより強くできるんじゃないか」
既存の理念を否定するのではなく、実態を伴うものへと「進化」させる。
それが荒武氏の考えだ。
主権者教育と投票率向上は「別のもの」
取材では、若者の政治参加についても聞いた。
荒武氏はまず、「主権者教育」と「投票率向上」は必ずしも同じものではないと指摘する。
「主権者教育っていうのは、より民主主義社会の中で主権者とはどういう人物であるか、成熟した民主主義社会の中でどういう国民や町民がその民主主義社会の一員なのか、そのことを教えたり実践したり、備うべきスキルを身につけていくことだと思う」
そのため、学校教育では現実の社会課題についてディベートやディスカッションを行うことが重要だとする。例えば、現在国会で議論されているテーマを題材に、与党役と野党役に分かれて模擬国会を行う。
「どういうふうに討論をしていけば、よりみんなの理解を得られるのか」「政治過程はどうなっているのか」といったことを実践的に学ぶ。
さらに、現職の政治家を学校に招き、社会課題について直接議論する機会も必要だという。
一方で、こうした主権者教育が、そのまま投票率向上につながるとは限らない。
「ここで得た知識が、知識だけで投票行動に必ずしも結びつかないんじゃないか」
では、投票行動につなげるには何が必要なのか。
そこで荒武氏が重視するのが、「政治家との接点」だ。
投票率を上げるには、政治家との接点を増やす
選挙前の討論会や、政治家同士の政策論争、政治家と直接話せる機会。
そうした接点を意図的に増やすことが、投票行動につながると考えている。
「こういう考えの人がいて、こういう考えの人がいて、対立点がこうで、自分の考え方がこうだってことがすごく共感できた。じゃあ投票しよう、という機会になる」
海外の例として、北欧などで選挙前に政党がブースを設け、街角で有権者と対話するような取り組みにも触れた。
政治を「遠いもの」にしない。
街中で政治に触れられる機会を増やすことで、政治家と有権者の距離を縮めていく。
その役割は政治家自身が担うべきだが、難しい場合には選挙管理委員会や民間団体が場をつくることも考えられるという。
「より動く」ことで差別化する
今回の三股町長選には3人の候補者が立候補している。
その中で、荒武氏が自身の特徴として挙げるのが、「動くこと」と「町民との接点」だ。
「多くの方と接点を持つことを意識的にやっていきたい。ずっとこれも実践してきましたけど、より対話とか、その人たちのお話を伺うとか、そういうことを本当に動くということによって示していきたい」
他の候補者が動いていないという意味ではない。
「より動く。より町民の皆さんとの接点を持とうとしている」
その競い合いによって評価されたいと語る。
また、「若さ」や「熱意」を自ら強調することには慎重だ。
「若さとか熱意っていうのは、その人の行動によって受け取られると思うんですよ」
年齢が若いこと自体ではなく、実際にどれだけ行動するか。
その結果として、有権者から「若い」「熱量がある」と評価されることに意味があるという。
「自ら言うことじゃないんじゃないかなっていうのをすごく思う」
「ずっと挑戦者でいたい」
選挙への意気込みを尋ねると、荒武氏は自らを「挑戦者」と表現した。
「今回はもう、僕は他の候補者の方たちにやっぱり挑戦していかないといけないと思うんですよね。だから、あくまでもずっと挑戦者だと思っています」
そのために、とにかく動く。
とにかく挑戦する。
それによって町が良くなる道を開いていきたいという。
もちろん町長選への立候補である以上、当選を目指す。
しかし、自身が当選することだけを目的にはしていない。
「一生懸命やることによって、例えば結果ダメだったとしても、その当選した人が、本当にこれやらないといけないよね、取り組まないといけないよねって思ってくれて、実践をしてくれたら、僕はそれでいいと思っているんですよ」
自身の提案が町政に反映され、三股町がより良くなるのであれば、それも一つの成果だと考える。
「本当にとにかく動いていくし、挑戦をしていく」
それが、今回の選挙に臨む姿勢だ。
若者へ「まずはボールを投げてみてほしい」
最後に、学生や若者に向けたメッセージを聞いた。
政治家から「政治に関心を持ちましょう」と呼びかけることには、少し違和感があるという。
「興味を持たれるような政治をしないといけない」
その上で、若者自身にも一つ提案がある。
「とりあえず、ボールを投げましょうってことをちょっと言いたい」
気になる政治家がいたら、SNSなどを通じて自分から連絡してみる。
「LINEとかTwitterとかFacebookとかInstagramとかで、自分の地域の政治家をちょっと調べてみて、なんかアクションできる窓口があったら、DMとか送ってみましょう」
返事が来れば、その政治家がどのような人物なのかを知るきっかけになる。
返事が来なければ、それも一つの判断材料になる。
そして、もし「この人はしっかり返してくれた」と感じたなら、その人を応援することもできる。
「その人の選挙があるんだったら、この人を応援しようよって言って、とりあえず投票行こうよっていうこともできると思うんですよ」
政治参加は、必ずしも大きな活動から始める必要はない。
まず自分から「ボールを投げる」。
政治家との接点をつくり、その反応を見て、自分なりに判断する。
荒武氏が若者に伝えたいのは、そんな小さな一歩だ。
「何かアクションをして、そのボールが返ってくるかどうかを、まずはやってほしい」
人口減少を前に、荒武氏が掲げるのは「減少を許容する三股町」ではない。
人口を可能な限り維持する。
そのために、子育て・教育、住宅、雇用を整える。
政策を実現するための財源を生み出し、さらに次の政策へ投資する。
そして、町民との対話を重ねながら、その政策を形にしていく。
「人口維持」という一つの課題を起点に、複数の政策をつなげながら三股町の未来を描く。
荒武氏の町長選への挑戦は、そんな「人口を減らさないための挑戦」と位置づけられている。



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